バスケ一筋17才。

彼女?居た事もあったよ。だけどね、「元彼がぁ〜」とか言ってたし、メールが来て返信しても無視されちゃうし。
そんなのが一週間続いて
終いには

「別れる」

しかもメールで。

泣こうと思ったけど

「男でしょ!?こんなこと位で泣かないのっ!!」がしみついていて泣けなかった。

母ちゃん、どんなことがあれば泣いてもいいのか、次の誕生日にでも教えてくださいよ。


夏休みに入り、彼女が居ないオレは、他の誰より集中してた。
合宿中だってケータイに気を取られないで済んだし。
見事スタメン。

試合当日、選ばれなかった先輩からリストバンドを渡された。
先輩が力強く握っていたリストバンドを受けとると、まだ熱が残っていた。

『夏を制する』

と油性ペンで書かれた文字を見て、力強く頷いてみせた。


試合はシーソーゲーム。
相手のチームプレイは何度もビデオで見た。
きっと、相手チームも同じだろう。

ゲーム後半、残り15秒。相手選手がシュートのポーズを取った。
キャプテンが阻止するべく高く飛んだが間に合わない。

ボールは綺麗に弧を描きゴールへ。

「頼む!外れてくれ!」

パシュッ

「まだ10秒あるぞ!」

キャプテンの張り上げる声が聞こえ、ボールがコートの中へ放たれる。

歓声がすごい。疲労困憊だ。自分がどこに居るのかさえ、もうわからない。

ただ、それでも興奮していることだけはわかる。


キャプテンの声が聞こえる。

「…づきぃ!!」

都築先輩!頼む!

祈る気持ちで目を瞑った瞬間、頭に電気が走った。
瞑っていた目を開けると沢山の白熱灯が見える。

え?

ピッピッピー

試合終了?


都築先輩のシュートの行方は…

オレの思考を止めたのは監督の声だった。

「大丈夫か?柚月」


四ノ浦柚月
伝説の男となった、17才の夏。