身体中の力が抜けた――。 手にしていたコーヒーカップを、はらりと落としそうになり、慌ててギュッと掴んだ。 こんなことって…… あのときのキスのこと、同じ気持ちでいてくれたなんて……。 信じられなかった。 私だけが、あのキスの余韻に浸っているものとばかり思っていたから。 本当は、ホテルの部屋に来てくれた日、私もキスしたかった……。 おでこではなく、唇に……。 あの夏に交わした、 熱い、体が疼くようなキスを、 もう一度したかった――…。