「どうかした?あんまり遅いから様子を見に来たよ」

「えっ……」



ついさっきまで、伸也さんの存在を忘れている自分がいた。


頭の中は、裕司くんだらけで。


でも…… 


そんなところ、伸也さんに知られるわけにはいかないから。


また、いつもの笑顔に戻って、何ともないように振る舞った。


「どうもしないよ」


「そっか。じゃあ、行こうか?」


「うん」


小さく頷くと、差し出された手を繋ぎ、高鳴る心臓を無理やり鎮め、平静を装った。


そのあとのことは、あまり覚えていない――…。