「すみません、お隣空いていますか?」


通路側に座る女性に遠慮がちに声をかけた。 


仕事をしていたらしい彼女は、チラッとこちらを振り向き、無言で頷いた。



一旦パソコンを閉じ、自分の膝の上に載せた彼女は、座席の前にあるトレーを上げた。


それを確認すると、


「すみません」ともう一度頭を下げ、身体を小さくしながら彼女の前を横切った。


ようやく座席を確保できた私は、真ん中の座席にゆっくりと身体を沈めた。


はぁ〜っと肩で大きく息を吐いた。


長時間の移動から疲労の溜まった身体を解き放とうと一瞬だけ、目を閉じた。