サッと振り返り、エスカレーターに乗ろうとしたところ、下りは階段のみだった。


もう少し先に、下りエスカレーターやエレベーターの表示が見える。


でも、あそこまで歩くならきっと階段を使った方が早い。


……仕方ない。階段で行こう。


ヒールの高いパンプスで、長い階段を降りるのは一苦労だ。


おまけに、左手にはLVのボストンバックを提げている。


三泊分の荷物を入れたバックは、当然のことながら重く、小柄な私の身体に負担をかけた。


バランスを崩し、体がヨタヨタしたときだった――。 

右足がグキッと鈍い音を立て、よろめいた。


捻挫のような痛みが走り、顔を顰めながら手すりに掴まり、なんとか重心を起こした。


……よかった。階段から落ちなくて。


最悪のケースから回避できて、ホッとした。


額からは大粒の汗が吹き出し、脇の下も汗で滲んでいる。


背中は、ワンピースの裏地がピタッと張りついて気持ち悪いほど。


でも、格好つけている場合ではなかった。


階段を降りきると、すぐに18番線に繋がるエスカレーターに飛び乗った。