教務主任の伊藤先生の車に乗り込んだあとも、変な汗が吹き出てきて、落ち着かなかった。 


――と、


携帯が、彼の着信を報せる音楽を奏でた。 


「携帯、鳴ってるよ!」と伊藤先生に言われるが、なかなか出られない。    

車という狭い空間の中では、話が漏れる恐れがある。


それに、気持ちが動揺している今、人前で話したらしどろもどろになってしまう。


やっぱり、ここでは話しにくい。 



「あぁ、大した電話じゃないから大丈夫です」


と答え、すぐさまマナーモードに切り替えた。