玄関に掲げられた全身を映す大きな鏡で、最後のチェックをした。


「さて、と」


玄関の扉を開け、バッグからキーケースを取り出し、鍵を差し込んだ。


「よし、と」


重たいバッグを右手に持ち、最寄りのバス停を目指し歩き始めた。


頭上から顔を見せる太陽。

このあとの暑さを、容易に予感させた。


普段なら歩いて10分のはずが、今日はヒールが高くて思うように歩けない。 


せっかく素敵な格好をしても、これではねぇ。


なんか、私ってペンギンみたい?と自分自身に苦笑しながら、歩道を急いだ。