白山通りを北へ向かって歩いて行くと、左手に大きな建物が見えてきた。


――文京シビックセンターだ。  


文京区役所やシビックホールも入るこの建物の最上階は、ぐるりと都内を見渡せる、眺望が自慢のラウンジがある。


区民の憩いのスポットだ。

それを横目に、目の前にある交差点の信号を彼と並んで渡った。


通りから一本奥まった筋に入ると、閑静な住宅街が広がっていた。


車が一台、ようやく通れるくらいの細い路地。


その一角に、裕司くんのアパートは存在していた。 


彼の言う通り、アパートまでは、10分とかからなかった。