水道橋駅で路線図に目を遣り、自宅最寄り駅までの切符ボタンを押した。  



千円札と引き換えに、取り出し口から出てきた切符とお釣りを右手でギュッと握り締めた。



頭の中に浮かぶのは彼のことだけ。



やっぱり、このまま帰るわけには行かなかった。



何か、“大切な忘れもの”をしているようだったから。  


切符とお釣りを無造作に財布にしまい込むと、指は勝手に、彼の携帯番号を押していた。


プップップップッ……




「もしもし?今、水道橋駅にいるんだけど……」



「分かった!今からすぐに行くから、そこで待ってて!」