そうは言ったものの、しばらくの間、なかなか歩きだせないでいた。 



自分の中で沸き上がる葛藤に、自分でもどうしたらいいのか、正直分からなかった。



でも、このままでは埒が開かない。だから、私から裕司くんに提案した。



「“せーの”の合図で後ろを振り返って、それぞれ帰ることにしよう」


 
「めぐみさんは、本当にそれでいいの?」



「……えっ、うん。だって、このままじゃ困るでしょ。
じゃあ、いくよ!“せーの”」



心の迷いを振り払うように、明るく努めた。



――が、やっぱり、お互い何度も振り返り、なかなか先に進めない。 



無情にも、時間ばかりが刻々と過ぎていく――。