「ホンっとに捺禾は鈍いんだな。遠まわしに言えば何も気づかない。」 「っなわけ…」 「あるの。彼方とか大翔とかみんな苦労してたんだぜ。」 「っ…晃は?」 「俺は…」 一瞬言葉を詰まらせる。 「俺は、別に自分が困っても良かった。捺禾が良ければ何でも良かった。 ――ずっと眼中に入ってたのはお前なんだよ!」 周りにある木々の風で揺れる音も 水が少しずつ流れる音も この声によって消された気がした。