「金や銀は他のヤツからせしめればいい。お前の翅は良く翔ぶし、『堕天使ルキの翅』と言えば欲しがるヤツは幾らでもいる」
「そうは言っても、売るつもりなんて無いんでしょう?」
窓枠に腰掛けるラディアに向かってあからさまな溜め息を吐いてみせる影の主──ルキは、徐にジャケットを脱ぎ捨てた。
四つボタンのベストも脱ぎ、タイを解く。
シャツも脱いでしまうと、白く滑らかな肌が露になる。
右手を左肩に添え、何かを引き出すような仕草と同時に、金色の片翼が音もなく現れた。
仄暗い室内でも煌めく翼に、ラディアは目を細める。
「いつ見ても立派なもんだな」
「翔べぬ片翼など、価値はありません」
「俺には無いものだ」
静かにルキへと近付き、光を放つ翅にラディアは手を添える。
「天使の翅を毟り取るのは気分がいい」
「私は堕天です」
「堕天使も天使も、存在自体は変わらないだろ。それに──」
煌めく翅を一枚。
その手に取り、くちづけを一つ。
ルキの躰が微かに揺れた後、ラディアの手には奪われても尚輝きを失わない翅が握られていた。
「──昔は、天使なんて生き物は嫌いだったんだ」
「知っていますよ」
「アイツらは、飛べないヤツらを馬鹿にし過ぎる」
「傲慢な者も居るという事です」
「お前もその一人だろ」
「過ぎ去った時の話です。無駄話はもういいですから、早くしてください」
「躰が疼くか?」
「薬はあるだけ全部頂きます」
ラディアの言葉を無視したルキは、ばさり、と片翼を乱暴に揺らす。
床に墜ちた翅を拾い上げ、ラディアの手に押し付けた。


