ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】

 とその時、「このアマー、よくも」と呻き声のように漏らし、意識を取り戻した富樫が、扉が開かれたままの出入り口から現れた。


 右手で後頭部を押さえながら、ヨタヨタとこちらへ近付いてくる。


 だがようやくロープは解け、両腕を開放された龍一は、すぐ傍に無造作に置かれた、多恵が富樫から奪った銃を手に取り立ち上がると、富樫のこめかみにその銃口を突きつけた。


 龍一のあまりに素早い身のこなしに、富樫は何が起こったかわからず、目を見開いたまま固まった。


「大人しく俺たちを行かせろ。死にたくなければな。」


 龍一の只者ならぬ気迫に負け、富樫が頷きかけた時、


「『ジャック・バウアーごっこ』か? 楽しそうだな。」


 声のした方にその場の全員が視線をやると、いつの間に戻ったのか、出入り口に木戸が立ち、そして余裕綽々といった笑みを浮かべていた。


「女だけでも解放しろ。」


 銃口は富樫に向けたまま、表情を変えることなく龍一が言う。