「いいのかよ?」
「何がだ?」
チラと俺に向けた兄貴の顔は、相も変わらず無表情だが、兄貴の心は泣いているに違いなかった。
「あんな別れ方して。」
俺らしい、無神経で迷惑な問い掛けに、兄貴は腹を立てるでもなく、
「俺にもしものことがあったら、この方が諦めもつくだろ?」
そう答えて苦く微笑んだ。
余計に悔いが残るんじゃねーの? てかそれより…
「兄貴、『俺なら大丈夫』って言ったよな? 俺はそれを信用したんだ。裏切ったら絶対に許さねーからな。」
俺がまた感情任せに声を荒げると、
「『もしも』の話だ。」
兄貴はその綺麗な顔をクシャリとさせて、穏やかに微笑んだ。



