ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】

 助手席のドアを閉めると、みゆっちが我に返ったようにハッとして、慌てて駆け寄り、助手席の窓に両手の平をついた。


 俺が窓を少しだけ下ろして隙間を作ると、みゆっちは、今度はすがるような瞳で俺を見詰め、


「お願い… 龍一を守って。」


 散々泣きじゃくって、喚き散らして、掠れてしまった小さな声で、切なる願いを絞り出した。


「わかった。」


 力強く約束してやれないのが、なんとも虚しい。


 俺がみゆっちに答え終わるや否や、兄貴はハンドルを切って車を発信させた。


 まるでみゆっちへの未練を断ち切ろうとするかのように。


 走り出した車のサイドミラーに映る、膝を折って地べたに腰を落とし、天を仰ぐようにして泣きじゃくるみゆっちが、ゆっくりと小さくなる。


 俺はいたたまれなくて、みゆっちが見えなくなるのを待たず、ミラーから目を逸らした。