一時間後、約束どおり、俺と谷口さんは、尾藤グループの社長室に居た。
部屋は大勢のガラの悪い社員たちに縁取られ、俺たちは完全に包囲されていた。
時間外勤務か? ご苦労さんだね。
「蔦山くんはどうしたのかね?」
尾藤グループ社長が嫌味な笑みをこぼして問う。
社長の傍らには、やっぱり色ボケシルバーマンが、涼しい顔して立っている。
「蔦山隆治は死んだ。けど、あんたらが欲しかったのはコレだろ?」
そう言って俺は、大切に頭にのっけて持ち帰った紙袋を、社長に向かって投げつけた。
社長がそれを受け取るなり、谷口さんが手帳を取り出した。
「尾藤グループ代表取締役社長、尾藤重信、覚せい剤取締法違反の現行犯で逮捕する」
谷口さんが早口で捲くし立てると、俺たちを取り囲んでいる男たちが、一斉に銃を構えた。
空気がピンと張り詰める。



