ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】

 そして、俺の言葉が途切れると、


「相変わらずわかりやすいな、お前は。」


 兄貴は温かい視線を俺に向け、寂しげにポツリと呟いた。


 悔しくて俺が舌打ちすると、ふわりとまた視線を逸らし、


「羨ましいって言ってるんだ。」


 遠い目をして穏やかに、静かにそう言った。


 兄貴… 兄貴はみゆっちとの『ゆるだら生活』で、すっかり丸くなってしまった。


 かつての鋭さや緊張感、何事にも怯まない冷酷さが衰えているのは明らかだ。


 そんな兄貴を今、やつらに引き渡したら、兄貴を待っているのは確実に


 『死』


 けど兄貴は、そんな俺の心配など気にも留めず、俺に背を向け、出口目指して歩き出した。


「着替えてくる。表で待ってろ。」


 振り返らずに掛けられた俺への言葉は、穏やかさの中に厳格さをも秘めていて、兄貴の決意が揺るぎ無いものだと悟る。


「兄貴!」


 俺は無意識に、兄貴を引きとめようと叫んでいた。


 俺の声に反応し、出口のドアに手を掛けた兄貴が、立ち止まって振り向いた。