兄貴は素早く身を翻して、ドア横の壁に自分の背を密着させ、ようやく俺に視線を寄越した。
未だ非常階段の踊り場に身を潜め、ドアをほんの少しだけ開けた細い隙間から様子を伺っている俺は、思わずギクリと身を震わす。
兄貴、『お前はそこで大人しくしてろ』とか言わないかな、などという儚い期待が脳裏をよぎるも、すぐさまそれは玉砕。
『来い』と顎で合図され、しぶしぶ非常階段からホテルの廊下へと出て、兄貴の方へと小走りで向かった。
兄貴にならって、俺もドア横の壁に背でもたれるようにして立つと、兄貴はジャケットの内ポケットから黒いニット帽のようなものを取り出し、銃を持たない左手だけで器用にそれをかぶった。
目出し帽だ。
口元もちゃんと穴が開いている、まるで覆面レスラーのようだ。
「俺のは?」
声をひそめながらも、ちょっと必死になって問うと、今度はサイドポケットから、何やら取り出して俺に差し出した。
「何だよ、コレ?」
それは、紛れもなく女性がスカートの時とかに履く、ナイロン製のアレ。
確かにこれで覆面した間抜けな犯罪者って、現実に存在しますけど…
未だ非常階段の踊り場に身を潜め、ドアをほんの少しだけ開けた細い隙間から様子を伺っている俺は、思わずギクリと身を震わす。
兄貴、『お前はそこで大人しくしてろ』とか言わないかな、などという儚い期待が脳裏をよぎるも、すぐさまそれは玉砕。
『来い』と顎で合図され、しぶしぶ非常階段からホテルの廊下へと出て、兄貴の方へと小走りで向かった。
兄貴にならって、俺もドア横の壁に背でもたれるようにして立つと、兄貴はジャケットの内ポケットから黒いニット帽のようなものを取り出し、銃を持たない左手だけで器用にそれをかぶった。
目出し帽だ。
口元もちゃんと穴が開いている、まるで覆面レスラーのようだ。
「俺のは?」
声をひそめながらも、ちょっと必死になって問うと、今度はサイドポケットから、何やら取り出して俺に差し出した。
「何だよ、コレ?」
それは、紛れもなく女性がスカートの時とかに履く、ナイロン製のアレ。
確かにこれで覆面した間抜けな犯罪者って、現実に存在しますけど…



