ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】

 むきになって捲くし立てる俺とは相反して、兄貴は落ち着いた口調で返してきた。


「お前、何のためにこんなとこまでわざわざやって来たんだ?」


「それは…」


 不意に口籠るも、意を決して続けた。


「谷口さんの奥さんは、俺の高校の同級生なんだよ、断れなかった。」


「へー。それはまた、ドラマチックな偶然だな。」


 途端、兄貴は面白がって、わざとらしく驚いて見せた。


 あーもう、ムカつくよ。


「こんな時に茶化すなよ。」


 ふて腐れて抗議すると、兄貴は意味ありげに微笑んで、


「ただの同級生じゃないんだろ?」


 全てを見透かしたような、勝ち誇った視線で俺を射抜いた。


「バカか!? 兄貴。ただの同級生に決まってんだろ? ふざけんな! くそ兄貴! 心配してやってんのに何だよそれ? 兄貴なんか埋められちまえ! 産廃の山の中で永遠に眠りやがれ、チキショー。」


 取り乱す俺を、兄貴は薄く微笑んだまま見守っていた。