「龍一くん、龍一くん、どっこ行っくの?」
黙々と久々の愛車を運転する兄貴に向かって、尋ねてみた。
これから迎える(多分)壮絶展開に、兄貴の中に眠る獣の血が騒いでいるのか、それとも…
俺が不注意でこすった助手席側のミラーに気付いたのか…
後者だったらマズイぞ、俺の未来は真っ暗闇だ。
兄貴の、兄貴による、兄貴のための『修理代取立て』、想像しただけでも恐ろしい。
ビクビクしながら、兄貴の横顔に視線を細く送っていると、兄貴はようやく口を開いた。
「東郷の幹部の一人が、高級ホテルでご満悦だ。今から冷やかしに行く」
俺の方など見もせず答えた。
兄貴の『冷やかしに行く』は、ただ単に『冷やかす』だけで済むはずがないのだ。
「物の場所は蔦山さんから聞いたんだし、直行すれば良くね?」
どうにも不満で、無駄だとわかっていながら提案してみた。



