「乃亜は、俺のこと、俺ほどは愛してなかったんだ。」
俺がボソボソと呟くと、
「お前なぁ、愛していたら、その男の子ども生みたいって思うとは限らねぇだろ!?」
谷口さんは、さっきとは打って変わって、優しい口調で言った。
「なんでだよ? 俺は乃亜を愛してるから、結婚したいし、子どもも欲しい。」
「算数じゃねぇぞ、バカ。必ずしも愛イコール結婚とはならねぇよ。世の中、お前が思ってるほど単純じゃねぇんだ。」
そう言うと、谷口さんはため息をつきながら、くわえたタバコに火を点けた。
俺もつられるように、自分のタバコを取り出して口にくわえる。
「谷口さんはいいよ、多恵ちゃんは谷口さんの子を産んだ。」
火を点けながら、モソモソと愚痴を零した。
「お互い合意のもとで、だ。俺たちは結婚してた。子どもが出来て当然だし、産んで当然だった。」
谷口さんは、紫煙を吐ききると続けた。
「翔馬は、俺たち二人に望まれて、この世に誕生したんだよ。」
俺だけが望んでも駄目だって、言いたいのか?
俺を愛してるなら、妊娠したことを喜んでくれると、俺、勝手に思い込んでた。
全部、俺の独りよがりだったのかよ!?
だとしても、俺は… 乃亜を…



