『根本産婦人科』の受付の若い女は、無愛想な俺にも優しく微笑みかけた。
カウンターに左前腕をついて少しだけ身を乗り出し、
「今日、安永乃亜の中絶手術をした医者に会いたい。」
彼女以外には聞こえないように、極力声を潜めて言った。
「失礼ですけど…?」
女は申し訳なさそうに苦笑して問い返す。
「有坂皆人。安永乃亜の子の父親だ。」
「ああ… 同意書の…」
「俺は同意なんかしていない。」
ようやく俺の用件を察したようで、彼女はその表情に恐怖を滲ませ、微かに身を引いた。
「医者に会わせろ。でないと暴れるぞ。」
途端、背後から乱暴に後襟を掴まれ、もの凄い力で後方に引っ張られた。



