乃亜の部屋に理沙がいるとわかっていたが、あえてインターホンを押さず、合鍵で乃亜の部屋へ入った。
ドアの開閉の音に気付いた理沙が、大慌てで飛んで来て、玄関から一歩も中へは入れまいと、俺の前に立ちはだかる。
「どけよ、理沙。乃亜に話がある。」
「今はダメ、明日にして。」
理沙は俺を睨みつけ、頑として道をあけない。
「皆人、あんた、交通課のおまわりなんかに、乃亜ちゃんを尾行させたでしょ?」
理沙は話をすり替えようとする。
「少年課だ。そのおまわりに全部聞いたんだよ、どけ。」
言いながら靴を脱ぎ、理沙を力ずくで押し退けて上がり込むと、そのまま奥の寝室へと直行した。
扉を開けると、乃亜はこちらに背を向け、ベッドに横になっていた。
そっと近づいて、乃亜の顔を覗き込んだ。
乃亜は目を閉じているが、多分眠っていない。
閉じた目から、次か次へと涙が溢れるように流れ出していた。
身を屈めて手を伸ばし、そっとそれを拭ってやると、乃亜はバサリと勢い良く上体を起こした。
ベッドサイドに両膝を落とし、俺が乃亜と視線の高さを合わせると、乃亜は俺をほんの束の間、潤んだ瞳で見詰めたが、すぐ耐え切れなくなったように視線を逸らした。



