一旦署に戻り、帰り支度を済ませて再び署を出てすぐに、背後から呼び止められた。
振り返ると、お友達の良治くんが、恨めしそうな視線を俺に向けて立っていた。
「乃亜ちゃんにいつもくっついてる女、おっかねぇ。」
開口一番、ため息交じりにそう言った。
そうだった、今日一日、乃亜の様子を遠くから見守ってくれって、良治に頼んだんだった。
すっかり忘れてた… でもこれ内緒。
「なんだよ!? 理沙に見付かったのかよ!? お前、使えねぇ。」
良治のこと、すっかり記憶から削除しておいて、そんなの棚に上げ、俺は責め立てた。
「あの赤メガネ、理沙っていうの? お前のことも相当怒ってたぜ。夜道の一人歩きは気をつけろよ。」
良治は面白そうに笑って言った。
お前… 全く心配なんかしてねぇだろ。
だが不意に、その表情を曇らせる。
「お兄さん… 大変だったな。」
ああ、そのことか、そのことなら… 残念ながら覚えてました。



