ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】

 俺も兄貴を追うように歩き出すと、兄貴は突然振り返り、


「いいか、誰が来ようと絶対に玄関は開けるなよ。例えそれが総理大臣でもだ!」


 俺の背後に向かって言った。


 兄貴はバカか、総理大臣がこんな僻地に来るわけねーし。


 比喩がアホくさすぎて、ちっとも笑えねー。


 だがさすがは兄貴の恋人みゆっち。


 プウと可愛く膨れて見せて、


「じゃあ、龍一が戻って来ても開けな~い。」


 とお茶目な憎まれ口を叩き、クルリと踵を返して瞬く間に家の中へ消えた。


 俺が呆気にとられて、閉じられたドアを見詰めていると、


「何してる? 皆人。」


 さっさとついて来いと言わんばかりに、兄貴が厳しい口調で俺を呼ぶ。


 何なんだ、こいつらは…


 思わず舌打ちするも、当然のごとく兄貴はそんな俺をシカト。


 兄貴についてすぐ後ろを歩きながら、兄貴の後頭部を睨み付ける。


 それは、俺のささやかな反抗だった。