ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】

「ねぇ… いくらで…




 抱いてくれるの?」




 隆治は自分の胸に添えられた露子の右手を、むしり取るように、その手首を掴んで剥がして捻り上げ、キリキリと握った手に力を込めた。


「いたっ…」


 露子は酷い痛みに、整った顔を歪めた。


「気安く触らないでもらえますか? お・か・あ・さん。」


 そんな露子を嘲笑うかのように、隆治がほくそ笑んで言う。


「は… 放してよ、ケダモノ!」


 痛みと、屈辱的な敗北感とで、露子は思わず取り乱して叫んだ。


 それでも隆治は露子の右手を解放せず、さらに圧をかけて締め上げた。


「そのケダモノの家に、希世を置いていくのか?」


「あの子はもう、私の希世じゃない。あんたたち親子が穢したんじゃない! 連れて行けって言うなら、私の希世を返して。」


 露子の責め立てる言葉は、隆治の胸を深くえぐり、掴んでいた手を緩める。


 その隙に、露子は隆治の手を振り払い、隆治を押しのけて部屋を出て行った。


 隆治はただ呆然とその場で立ち尽くし、露子を追うことができなかった。