舞台には、色とりどりの着ぐるみたちが、コミカルなダンスを繰り広げている。


 一曲終わると、司会のお姉さんが登場し、お決まりの挨拶を短めに済ませると、キャラクターを端から順番に紹介し始めた。


 着ぐるみたちは、紹介されると可愛くワンポーズ。


 その度に、観客側に拍手喝采が湧き起こる。


 こんなのに兄貴が出演する訳ないしね。


 メルヘンワールドに、この世で最も似合わない男だし。


 だが数分後、俺は自分の目を疑った。


 最も似合わないその男が、舞台袖から颯爽と現れた。


 凛とした美しい歩みを見せ、風を切って、薄茶の髪をかすかになびかせ、ダークスーツを身に纏ったモデルのようなその男、間違いなく兄貴だった。


 兄貴は司会のお姉さんに近づくと、何が起こったのか把握できずに呆然と立ち尽くす彼女の手から、そっとマイクを奪い取った。