受付の前を一旦通り過ぎるが、何か思い立ったように谷口さんは俺と共に後退し、


「こいつ、俺のツレ。」


 と言って、右手をアクリル板の下のトンネルに差し込んだ。


「なんだ、あんたのツレかよ。」


 舌打ちしながら、受付のハンチング男は、俺から奪った樋口さんを自分の胸ポケットから出し、谷口さんの掌の上に、ペシッと叩きつけるようにして置いた。


 この野郎… 俺の樋口さんをポケットマネーにしようとしてやがったな。


「おら、しまえ、皆人。」


 谷口さんは樋口さんを俺に差し出して言った。


 お帰りなさい、樋口さん。


「何? 谷口さん、ここの常連?」


 尻ポケットから財布を取り出して、それを元有った場所に戻しながら尋ねた。


「んな訳ねぇだろーが!」


 また殴られた。


 …って事はだな、ここも政府の息がかかっている施設という事ですか?


 暴力団より性質が悪いように感じるのは、俺の気のせいだろうか…