車のキーは見つかったといえども、あいにく車検に出している。
そしてまた歩いて帰ると、必ず老婆に出会い、気味の悪い目で見つめられるのだそうだ。
東雲はよしみの居酒屋へ寄って、なんとか堀田を安心させてやりたいと考えた。
僅かに酔って人らしさを取り戻したかに見える堀田を、タクシーではあるが、家まで送ってやることにした。
ほんの手前まで来た、というところで例の老婆を見つけた。
タクシーを降りると、
「タケル! タケル……!」
とやっている。
近づくと彼女は立ち上がり、黄色い歯を見せ、耳まで裂けんばかりに、にたり、と笑った。
東雲は堀田の話から聞いていたのとはちょっと違う印象を受けた。



