彼は瞳に光を映さなくなって、ぼんやりと呟く。 もう、なくなっちまったんだな、と。 友人とふざけて刻んだあの落書きは、思い出にすらならなかった。 消えてしまった。 くらくらする頭で、お互い一緒に悪いことしてたよなあ、と考える。 笑えてきそうなほど、懐かしい。 「タケル……! タケル!」 暑さも手伝って、彼はうんざりした目で老婆を見た。