東雲は堀田を庭から引き上げた。
彼の目にはいまにもこときれそうな弱々しい光が瞬いていた――焦点があってない。
彼は、おかしい、というように周囲を見渡した。
「あのひとはどこだ。さゆりさんは?」
「何を言ってるんだ。あの老婆のことなら、とうにいない。気配もしない」
「全部オレにあだなす者への見せしめと言った。オレはこの庭の主と言った。だれも入り込めない月光だけの庭で、オレは神になるはず……」
堀田が怪しい一言を口にしたが、通報はしなかった。
多分別の方の番号を押さねばならない。
いかに庭先の白いものと臭いが鼻をつこうと、彼には多分、責任能力がない。



