月光の庭

 


 どうにか殴ってでも正気に返らせてやりたかったが、それも痛々しい。



 この友人が壊れてしまう寸前で、自分が居合わせていたのなら、それも可能だっただろう。



 しかし、今それができるかというとできない。触れるだけで壊してしまいそうだ。





「よすんだ、馬鹿なことは」



 だが彼はかすかな湯気の立つたらいに足を入れ、そのままソファでうっとりとして天井を見つめた。