月光の庭


「正気だよ。この世は苦痛に満ちている。ちょっと血を捨てて、業を離れてみれば、こんなにも楽になれるんだ。みんなが求めてる。みんなに喜んでもらえる。貴重な映像だよ」


「おまえはどうかしている!」


「そうやって、ひとは自分の行動さえ把握できなくなるほど、浴びるように酒を飲むじゃないか。難聴になったりハイになったりするほど音楽を好むじゃないか。オレはなにもクスリを投与してるわけじゃない。悪い血を抜いて、健康に、うつくしく暮らしてるんだよ」
 




 東雲は拳を握った。



だが、もし、堀田がしていることが本当に彼の意志ならば、ちょっとやそっと殴ったくらいじゃ正気に戻りそうにない。





「医師でもないのに医療行為をした場合、犯罪になる……」


「医療じゃないよ。健康法、さ。今度本も出すよ。読んで納得してくれるひとは、たくさんいると思うよ。ま、中にはおまえみたいなのもいるかもしれないがな」
 




 ふふ、と笑うと堀田はPCの画面を変えた。