月光の庭

 だが、とめよう、抑えよう、とすると例の老婆がにこにこ顔でやってきて、枯れ木のよ
うな腕で強く、ひっぱって追い出しにかかられる。



 さゆりさん、と奥から声らしき呼びかけが聞こえ、その柔らかさから堀田の心持ちが伝わってくるようだった。


大切にされてるんだな、と目の前の老婆を見る。



 しかしまるで老婆とは思えないほどの、万力のような強さで、手首が折れそうに思ったくらいだ。



 東雲は思った。



 もう、近寄るまい。せめて、しばらく。



 だがその半年後、堀田の変調はますます進んだ。



 会社内で派手に暴れたり、迷惑をかけてしまったわび、といっては同僚の幾人かを家に呼びどんちゃん騒ぎだ。
 


 初めは不審に感じていた女子社員すら、自分の家のように出入りし、くつろいでしまって、だれもまともに出社しなくなった。



 そして、マイホームを買ってからすぐに単身赴任に出ていた社員が戻るや、会社のようすを見て驚いた。