その日、仕事を終えて帰宅した俺は、玄関で崩れ落ちた。無事に帰って来れた、それだけでも奇跡のようだ。今日一日の出来事が、走馬灯のように頭を過ぎる。 今でも信じられない。全てが夢だったのではないか。だとしたら、どこからどこまでが……、時計が、営業成績が、梨花が……。 そのとき、ズボンのポケットの中で携帯が揺れた。 「今日も一日お疲れ様でした。私はこれから出勤です。真哉さんはゆっくり休んでください」 梨花からのメールだった。 夢じゃない。夢ではない。……ではあれも、夢ではないのか。