Time is gone



「ごちそうさまでした。でも……本当にご馳走になっても、よろしいのですか?」
 予約していたイタリアンレストランを出た二人は、駅へ向かい歩いていた。
「気にしないで。安い店だし」
 ディナーのコースにワイン一本を空け一万ちょい、実際に高くはない。余計な気を使わせない、そして下心を覗かせないためにも、それくらいの店を選んだのだ。
「金額の問題じゃないです。いつもお店に来ていただいているのに、その上……」
 俺はそれ以上を防ぐように、首を横に振った。
「僕から誘ったんだ、今日は奢らせてくれよ」
 ドラマでしか聞いたことのない台詞に、自分でもむず痒くなった。
「じゃ、また誘っていただけますか?」
「もちろんだよ! その……梨花ちゃんさえよければ」