Time is gone



 約束の十分前、俺は銀座駅前で流れ行く人々を眺めていた。秋は深まり、冬を目の前にした十一月。高すぎず、だからといってセール品とは思えないコートを纏った、そこそこ裕福な独身女の群れ。だがその誰一人として、梨花に勝る女はいなかった。
 俺はそんじょそこらの女では太刀打ちできないような美女と、これから二人で食事をするのだ。
 そんな優越感に一人浸っていると、背後から声を掛けられた。もちろん、梨花だ。薄茶色のトレンチコートを纏った彼女は、店で見る妖艶なドレスとは違い、清楚なイメージが一層引き立っていた。化粧もナチュラル。どこにでもいそうで、ここにしかいない絶世の苦学生。