Time is gone



 梨花との食事を前日に控えた晩、俺は眠れぬ夜を過ごしていた。こんなことは高校時代、初デートの前日以来だ。あれから十年以上経つが、それ以来、こんな夜を過ごすことはなかった。
 俺が付き合ってきた女性は、雪菜を含めて三人。決して誇れる人数でも、相手でもなかった。彼女らには失礼だが、その容姿は極めて普通……、いや、それ以下だったかもしれない。
 俺の好みがいわゆる、Bセン、というわけではない。テレビや雑誌を飾る、絶世の美女と付き合いたかった。だが彼女らが、見た目も学歴も才能も収入も何もかもが普通の男を相手にするはずがない。美女と野獣が結ばれるのは、夢の国での話だけだ。だからこそ、身分相応の女と付き合ってきた。