「真哉さん、来てくれたんですね」
その笑顔を見た瞬間、俺の脳内では大量のアドレナリンが分泌され、次々と命令を下した。
この女をものにしろこの女をものにしろこの女をものにしろ、この女を……、と。
夢のような時間はアッと言う間に過ぎていく。こんなふうに全てが過ぎて行けば、時計の力を借りずに済むのだ。延長を尋ねてきたボーイに対し、それをキッパリと断った。まだ理性が働いていた。だがそれは、財布の紐を気にしたからではない。これからものにするべき女を、調子に乗らせないためだ。
寂しそうに、申しわけなさそうに伝票を持ってきた梨花。またメールします、そう言って釣銭を手渡してきた梨花。その度に重なる視線。俺はその瞳を見つめ返しながら思った、これは営業でも掛け引きでもない、勝負だ、と。男と女の化かし合いを制した方が、それぞれの思惑を叶え、相手を手玉に取ることができる。真剣勝負だ。



