一日一通のメールのやり取り。昼間働く俺と、夜働く梨花。それは仕方のないことだ。それよりも何よりも、二人は従業員と客でしかない。だがその一通のメールが、俺にとっては何よりもの楽しみとなっていた。例えそれが、営業のためのそれであったとしても。
日に日に梨花の存在が心を締めていく。そして翌週の金曜日、俺はその思いに駆られ、一人六本木の街に佇んでいた。
ここで店に行けば、梨花の思う壺……。
そう思うと同時に、部長の言葉が脳裏を過ぎった。
抱くか、領収書の山……。
何も金の心配をしていたわけではない。店に行ったとしても、たかだか一万程度だ。躊躇う額ではない。では何を迷っているのか、それは露骨に好意を示すことだった。
「いつまでウジウジしている。俺は金も地位も手に入れた! 後は女だけだ! 地味なメスではない、極上の女だ」
俺は自らを鼓舞したが、性根までは変わっていなかった。なおも躊躇う己に渇を入れるため、目に着いたコンビニに飛び込み、缶ビールを二本その場で空にした。



