Time is gone

「でも電話くれて、嬉しかったです。……きっと、来ないと思っていたから」
　その憂いを抱いた声に、俺は再び夢の世界に引き戻された。
「こっちこそ仕事中だと思ったんだけど……、その、どうしても」
　声が聞きたかったんです、その一言を躊躇っていると、梨花は慌てた様子で口を開いた。
「ごめんなさい、呼ばれちゃって……。また電話してもいいですか？」
「もちろん！　メールします。すみませんでした、仕事中に」
　おやすみなさい、その響きは天女の囁きのように可憐で、美しく、心の中のボヤはすでに、子供の悪戯では済まされないほどの勢いで燃え始めていた。