気になる女ができた。
それは夏も終わり、秋の気配が漂い出した九月下旬のことだった。いつものように部長に連れられて向かった六本木の小料理屋。いつもはここでお見送りだが、その日、特別上機嫌であった部長は、そのまま六本木のクラブに俺を連れて行った。
六本木のクラブと言っても、そんな高級な店ではない。歌舞伎町のキャバクラに、毛が生えた程度の店だ。中堅会社の営業部長では、これくらいが関の山だ。
「彼は若いが、こう見えて我が社一の営業マンなんだ。こういう店は慣れてないようだから、みんな可愛がってあげてくれ」
部長から紹介を受け、俺は初々しいクラブデビューを飾った。



