迎えた大型連休、お盆。俺と雪菜は箱根温泉の宿にいた。北海道や沖縄、ハワイやヨーロッパ旅行を提案した俺に対し、雪菜は黙って首を振った。その結果、比較的近場の箱根で落ち着いてしまったのだ。
金の心配はない、散々そう繰り返した俺に対し、そうじゃないの……、そう言っては雪菜は黙り込んだ。では何が理由なのか、それをいくら聞いても、雪菜は戦争孤児を憐れむような目つきで、俺を見つめ返すだけだった。
俺は何も見栄を張ろうとしていたわけではない。ただ、今まで贅沢をさせてあげられなかった分、その埋め合わせをしようとしていただけなのだ。もちろん、それを素直に口にできるほど、器用な男ではなかった。



