Time is gone

 大丈夫。戻れなくていいじゃないか。この時計さえあれば、こんなふうに地道に働く必要なんてないのだ。そのための時計だ。俺はこの時計に選ばれたのだ。
 ……時よ、進め。
 俺はリューズを回した。目まぐるしく景色が変わっていく。チャイムを鳴らし、断られ、それでもチャイムを鳴らし、やっとの思いで居間に通され、契約の判子をもらい、会社に戻り、一日の報告を済ませ、満員電車に揺られ、アパートの玄関に辿り着く。
 ……これで、いいんだ。
 そう思いながらも、心のあちこちには背徳感が散りばめられていた。それを払拭するように、俺は時計を撫でた。