Time is gone



 雲一つない、だからと言って星も瞬かない空の下、俺は目当ての家の前に佇んでいた。異常なし、それを確かめ、そっと玄関の門を開き、素早く身を滑り込ませた。よく手入れされた庭を抜け、裏手に向かう。そして裏戸を発見すると、ピッキング道具を取り出し開錠に掛かった。ものの数秒で、カチャリッ、という音がした。その微かな音でさえ、遠くで唸りを上げるエンジン音に掻き消された。それは、郷愁を誘う唸りだった。若かりし頃、連夜暴走行為を繰り返していた日々を思いださせるそれ。
 ハイブリッドカーが主力となった今、豪快なエンジン音をたてて走るのは、レーシングカーか暴走車だけだ。時代は変われど、ヤンキーは変わらない。地球に優しいハイブリッドのバイクで、無音の暴走を続けるヤンキーなどいない。けたたましいエンジンの唸りは、やり場のない心の叫びだ。……叫びだった。