時計を手にしてから早くも一ヶ月が経った。その間、快適な日々が続いた。どんなに寝苦しい夜も、最高気温三十八度という灼熱の太陽の下でも、時計の力を使えば何てこともない。その苦しみは一瞬の内に過ぎて行く。しかもその間の記憶もしっかりとあり、日々の仕事、下見も抜かりなくこなしていた。この一ヶ月間にもう一件、盗みにも入った。エアコンなどなくとも、十分この夏を乗り越えることができそうだった。
金はそこそこある。真っ当ではなくとも、それを稼ぐための手段もある。さらなる犯罪に手を染めることになろうとも、ヤンのもとにいれば将来も安泰だ。特定の女も、結婚も子供も不要だ。女は金で買えば十分であり、俺みたいな人間が増えては日本のためにならない。
これと言った欲のない俺は、ただただその日を、暑さを乗り越えるために時計を利用した。快適な日々だった。だがその平穏な日々は、音もなく崩れ始めていた。……平和ボケした俺が、それに気付けるはずもなかった。



