Time is gone

「俺はそのために、出所してすぐにホームレスとなり、この新宿で待ち続けた。この地でその時計と出会ったのであれば、この街にいれば、必ず再び巡り合えると信じてな。そしてやはり、その時計は俺の前に姿を現した。……さぁ、お前の好奇心も満たされただろ? その時計の恐ろしさも分かっただろ? 悪いことは言わない、寄こせ」
 俺は男の鬼気迫る表情を見て、笑った。
「やだね」
 男の表情は、正に鬼神のようなそれへと変わった。
「こんな奇跡のような時計を、お前の私情のためにみすみす手放すはずがないだろ」
「お前はその時計の恐ろしさを知らないから、そんなことが言えるんだ。その恐ろしさを身を持って知ってからでは、遅いんだぞ」
「そう言うのを、余計なお世話、って言うんだよ。第一、時計のせいって言っているけどな、全部お前のせいだろ? 時計の魔力? 人生を狂わせる? 寝言は寝てから言え。女に騙されたのも、女を殺したのもお前だ。それを認められずに、時計に責任を押し付けているだけだろ。それなのに正義のヒーローぶりやがって……人殺しが偽善者ぶんな!」
 男は立ち上がり、俺の胸倉を掴もうとしたが、俺はそれを軽くかわした。