Time is gone

「二年・三年と刑期を重ねて行く内に、徐々に考え方が変わっていったのさ。あぁいうのを、憑き物が落ちる、って言うのかもしれないな。……あの女を殺しても意味はない、あの女はホステスという職を真っ当していただけなんだ。そんなことにも気付かないで、騙されていた俺が悪かったんだ。……いや、欲に負けた俺が、その時計の持つ魔力に負けた俺がな」
 男の目に鋭い光が宿った。
 こんな目をした人間を、俺は知っている。……ヤンだ。きっと人を殺したことのある人間だけが放つ、闇の光……。
 その光が捕らえていたのは、俺のズボンの左ポケットだった。そこには時計が入っていた。
 こいつは誰よりも何よりも、この時計を恨んでいる。
「俺は刑務所の中庭から見上げる、四角い空に誓ったんだ。その時計を、この手でこの世から葬り去ることを。これ以上、その時計によって人生を狂わされる者を出さないために。刑務所に何年・何十年入っていようとも、俺の犯した罪は許されない。ましては、死んだ人間が生き返るはずもない。だからせめてもの罪滅ぼしとして、俺はその時計をこの世から抹消する。それが唯一、あいつのために……」
 雪菜のためにできることなんだ……。
 男はそう呟き、目を伏せた。