「お前はその女を、今でも恨んでいるのか?」
殺人に至るまでの経緯を聞き終えた俺は、男に尋ねた。
「どっちの?」
「両方だ」
男は溜息を吐き、口を開いた。
「恨んださ。ホステス何かに騙されなければ、俺は殺人犯何かにならずに済んだ。復讐? しようとしたさ。務所から出たら真っ先に会いに行って、殺してやろうとすら……」
殺す、その言葉の意味とは裏腹に、男の口調に憎しみは感じられなかった。
「時計を捨てた女は?」
「恨んでどうする? 俺はその女をこの手で殺してしまったんだ。恨まれるのは……俺の方だ」
二人は暫くの間黙った。そして再び口を開いたのは、男だった。
「俺は獄中で、どうやってホステスの女に復讐を果たすか、それだけを考えていた」
「その復讐は、果たしたのか?」
「果たしていたら、こんな場所でゆっくりとお話していられるか? 逃げ回っているか、死刑台の前に立つ日を怯えていたさ」
「なぜ、復讐を果たそうとしなかった?」
男はやれやれと言うように、首を左右に振った。



