Time is gone

「髪の毛の生え際と、でこの陽焼け跡の違いだ。僅かだが、生え際の方が陽に焼けていない。どうせ変装のためにカツラでも被り、標的となる家を探しまわっているんだろ? 営業マンの振りでもしてな。スリの標的はその場で決まる。擦れ違った瞬間には一仕事終えているわけだから、変装する必要もない。だが空き巣は違う。入念な下見が必要だ。ゆえに変装する必要がある」
 俺に返す言葉はなかった。全て図星だったからだ。
「スリから空き巣に転向、よくある話だ」
 俺は降参とばかりに両手を上げて見せた。
「あぁっ、お前の言うとおりだ。だがどこでそんな知識を……」
 言いかけて止めた。愚問でしかない。
「少しは頭もキレるみたいだな。そう、そんな質問は無意味だ。俺は十年間、務所暮らしをしていた。そこには殺人、詐欺、強姦、強盗、密売、もちろんスリも空き巣もいた。犯罪人の肥溜めの中にいれば、自然とそれくらいの知識は身に着く。さぁ、自己紹介は終わりだ、好奇心も満たされただろ」
 まだだ、俺は即答した。